豊かな自然が育む、清冽なる水の味わい。
酒づくりに適した 水が豊富な福岡
わき水や井戸水などが美味しい場所は、名水として昔から有名だったり、口コミで多くの人が訪れたりします。飲んで美味しいと感じる水は、まずほぼ間違いなく酒づくりにも向く水です。
酒づくりに向く水とは、まず第一に細菌や汚れなどの有害成分がないことです。また飲みやすさ飲みにくさを左右する要因としての鉄分が少ないことです。鉄分の多い水は口当たりがよくなく後味もすっきりとしません。また鉄分は米麹がつくる物質と反応して、酒が着色する原因となったり、老香といった酒が古くなった匂いを早く発生させたりします。
福岡県は南東部に1000m級の台地性の山地があり、中部には筑紫山地があります。有明海に注ぐ九州一大きな筑後川、響灘に注ぐ遠賀川などの一級河川もあり、あらゆる場所で、良質で清冽な酒づくりに適した水が得られます。
豊かな自然が育む、清冽なる水の味わい。
流域に醸造元が多い 筑後川
ゆったりとした流れと豊富な水量を誇る筑後川流域には、現在も多くの蔵元が軒を並べています。大河川の流域には豊富な伏流水があります。
伏流水とは地上を流れる川の水が、ある場所では地下に染み入り流れるものです。地下を流れる間にろ過されたりミネラル分を含んだりして美味しい質の良い水となります。筑後川流域には優良な伏流水が充分にありました。また仕込み水の良さに加えて筑後川が重要だったのは、出荷に当たって昔は船が必要だったこと。鉄道や道路が整備されていなかった江戸時代は、運搬の主な手段は海運だったのです。
流域の三潴郡城島町、ここは明治時代の半ばには80を超える酒蔵が存在した日本でも有数の酒どころでした。全国の品評会でも入選する銘柄が続出し、兵庫の灘、京都の伏見と同格の酒どころとして認識されていたといいます。
豊かな自然が育む、清冽なる水の味わい。
軟水は酒造りに適している
水には硬度というものがあります。それはカルシウムとマグネシウムの量 で決まります。その含有の度合いによって硬水や軟水と水の性格づけをします。
一般 にミネラルが多い水、つまり硬水は醗酵が盛んになります。酵母も自然に発生して醗酵が進みやすくなるのです。だから昔から硬度の高い水は名水と言われ酒づくりに適した水とされてきました。それに対し軟水は醗酵が進みにくい分だけ糖分などがわずかに残りやすく、甘口の俗に言う女酒ができやすい環境にありました。しかし現代では技術の進歩により、自然の気候に任せっぱなしで酒をつくることはほとんどなくなりました。そうなると軟水の方がきめの細かい酒がつくりやすくなったのです。荒っぽい酒にならず、口当たりのまろやかな優しい酒が生まれるようになりました。
いま地酒で全国的に人気のある銘柄はだいたい軟水で仕込んでいるところが多いようです。福岡の水は地域によって違いはあれ、だいたいにおいて軟水が多いのです。時代が求める味に適した水環境が整っています。